2月6日付の日本経済新聞に、認定アドバイザー制度のスタート時には認定アドバイザーが数百人の規模になるという記事が出ていました。
記事の中では、認定アドバイザーをお金にまつわるアドバイスを行う一定の中立性があるアドバイザーとして、ファイナンシャル・プランナーが対象になることを紹介していましたので、早速認定アドバイザーについて調べてみました。
以下、1月26日に行われた「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料を基に記載します。
そもそも認定アドバイザー制度の創設は、令和4年の資産所得倍増プラン策定時に、中立的なアドバイザー制度の創設がうたわれたことが始まりです。
「安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)」では、認定アドバイザーに関して以下のように記載されています。
金融経済教育推進機構において 、 顧客の立場に立った アドバイザーを見える化 ・ 支援
安定的な資産形成の支援に関する基本方針(案)
なお、金融経済教育推進機構は、今年の 4 月に設立され 8 月からの本格稼働が想定されています。
1.金融経済教育推進機構の事業概要
金融経済教育推進機構(以下、「機構」)は以下の事業を行うことが想定されているようです。
- 講師派遣事業
- イベント・セミナー事業
- 個別相談事業
- 認定アドバイザー事業
- 教材・コンテンツ制作
- 認定アドバイザー養成プログラム
(1)認定アドバイザー事業
認定アドバイザー事業については、以下のように説明されています。
特定の金融事業者 ・ 金融商品に偏らないアドバイスを行うアドバイザーを認定 ・ 公表 ・ 支援
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
(2)講師派遣事業
講師派遣事業については、以下のように記載されています。
金融経済教育の機会提供に当たっては、企業等における職域での取組みが鍵となる。
中堅 ・中小企業が置き去りにされないよう留意しながら、企業等において広くセミナーや 個別相談等を行うなど 、(略)認定アドバイザーの参加を得ながら積極的な活動に官民一体となって取り組むべきである 。
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
(3)個別相談事業
個別相談事業については、以下のように記載されています。
「個人の行動変容を促すためには、金融経済教育とともに、個人の立場に寄り添ったアドバイザーの役割が重要である。金融経済教育と顧客の立場に立ったアドバイスは地続きであるとの認識の下、両者を一体として捉え、統合的に取組みを進めていくべきである。」
機構 では、認定アドバイザーによる無料の個別相談( 最大 1 時間で対面又はオンライン) を実施し、個人が個々の状況に応じたアドバイスをより得やすい環境の整備を 図る。
この ほか、家計管理 や生活設計、 NISA ・ iDeCo といった資産形成支援制度、金融商品・サービス等についての一般的な情報提供を行うための電話相談窓口(最大 30 分間)を 設置。上記と同様、 機構が依頼する認定アドバイザーが主体と なって実施。
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
なお、相談対応事項は、「家計管理」、「生活設計」、「資産形成」等の一般的な内容に関する相談・照会とし、相談の対応者は一般的な情報提供にとどめ、特定の金融商品・サービスを推奨することはしないとされています。
また、相談の対応者は、一定の知識及び経験を有し、機構の審査(模擬面談)を通過した認定アドバイザーとされています。
2.認定アドバイザー制度
認定アドバイザー制度に関しては、以下のように記載されています。
機構では、一定の要件に合致し所定の審査を通過した者(個人)を、一定の中立性を有する顧客の立場に立った アドバイザーと して 認定・公表( 認定アドバイザー) 。
1.認定アドバイザーとは
認定アドバイザーは、家計管理、生活設計、 NISA ・ iDeCo 等の資産形成支援制度、金融商品・サービス、消費生活相談等についてアドバイスを行う者を想定。機構は 、 認定アドバイザーの氏名のほか、個人がアドバイスを依頼する際の参考となるような情報 (保有資格、経歴、得意分野、報酬の目安、自己 PR 、実際にアドバイスを受けた個人からの評価等)を公表 。
2.機構講師 ・相談員
機構内では、機構の講師・相談員として事業に参画可能 。3.割引クーポン配布事業
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
アドバイスの価値や意義を個人に知っていただく契機となるよう、 認定アドバイザーが機構外において営むサービスを利用する個人に対して、相談料の一部を補助する仕組み(割引クーポンを電子配布)を創設 。
(1)認定アドバイザーの認定要件
次のいずれにも該当しないこと
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
- 金融商品の組成 ・ 販売等を行う金融機関等に所属している
- 金融商品の組成 ・ 販売等を行う金融機関等から 、顧客に対するアドバイスの信頼性 ・ 公正性に影響を及ぼし得ると考えられる報酬を得ている
(2)機構講師 ・ 相談員の登録
1.原則として 、 認定アドバイザーの中から 、 審査を通過した者を講師に登録 。
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
2.認定アドバイザーの中から 、 審査を通過した者を相談員に登録 。
(3)資格と一定の業務経験
<資格等(例)>
- CFP® 、AFP 、FP技能検定(2 級以上)
- 外務員1種
- 証券アナリスト
- プライベートバンカー
- 公認会計士
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 消費生活相談員
- 消費生活アドバイザー
- DCプランナー(1 級)
- 住宅ローンアドバイザー
- 銀行業務検定(税務 2 級)
- 銀行業務検定(相続アドバイザー 3 級以上)
- 銀行業務検定(年金アドバイザー 3 級以上)
- 金融窓口サービス技能検定(1 級)
- 投資助言・ 代理業者
<一定の業務経験(例)>
- 個人からのFP 分野における相談 ・ 提案業務
- 個人からの公的年金・ 社会保険に係る相談
- 個人への対面による金融商品の提案・ 販売
- 個人への対面による保険契約の提案・ 販売
- 個人への不動産購入の資金計画作成・ 提案
- 個人への住宅ローンに係る審査・ 相談等
- 個人融資に係る審査・ 財務状況分析 ・ 相談等
- 個人に対する各種税務相談(確定申告 、 相続 、 遺言等)
- 成年後見制度に係る相談
- 保護者に対する教育資金プラン等の提案
- 児童・ 生徒に対する金融経済教育の実施
- 個人への金融商品に係る投資助言
(4)講師派遣事業にかかる標準講義資料
金融経済教育推進機構が行う講師派遣事業に関しては、標準講義資料を作成するようです。
これまで各団体でばらつきのあった講義内容について、金融リテラシー・マップをもとに再編し、日本のどこであって も、等しい 内容の金融経済教育が提供されるような 環境の整備を目指す。
「金融審議会第26回市場制度ワーキング・グループ・第6回顧客本位タスクフォース合同会合」の事務局(金融庁)説明資料
そこで、機構が行う講師派遣事業で利用する教材として、各団体が有するノウハウを結集し、金融リテラシー・マップに則って幅広い分野を横断的に網羅した標準講義資料を作成予定 。講義時間・派遣先のニーズなどに応じてカスタマイズ可能なつくりとして 、パワーポイント形式での提供を想定。
(注)利用にあたって、各講師の創意工夫が発揮されるよう、地域に即した事例の追加や順番の入れ替え等を許容するなど、一定の柔軟性を確保。
このような事を踏まえると、認定アドバイザー制度は独立系のファイナンシャル・プランナーにとって、強力なフォローの風になるような気がします。
「金融経済教育の機会提供に当たっては、企業等における職域での取組みが鍵となる。」とされていることから、ファイナンシャル・プランナーが認定アドバイザーとして企業等でのセミナーを行うことにより、ファイナンシャル・プランナーの活躍の場が拡がる可能性があると思われます。