約7割の企業が60歳以降の継続雇用制度を導入

高年齢者雇用安定法の改正により、2013年4月1日に60歳以降の高年齢者雇用確保措置が義務付けられてから約10年が経過し、ほぼすべての事業主が何らかの高年齢者雇用確保措置を実施し、そのうち約7割の事業主は60歳以降の継続雇用制度を導入しています。

国としては、60歳定年制の廃止や定年の引き上げを期待していると思われますが、60歳ぐらいになると体力的、精神的にも現役世代と同様の働き方は難しくなる人が出てくることから、従業員の希望に応じて勤務日数や勤務時間を調整できる継続雇用制度は現実的な選択ではないかと思います。

賃金水準は60歳時の60%~70%台

60歳以降も継続雇用した場合の賃金は、60歳時点の60%~70%台に低下するのが一般的のようです。

60歳までは管理職として、部下の指導・育成を行いながら組織目標の遂行に責任を負い、対外折衝もこなし転勤を受け入れるてもらうことを期待して、それ相応しい給与を支給していましたが、60歳以降は管理職から外れ、部下も持たずに、残業や転勤をすることもなくなることから、賃金を低下させることはやむを得ないと思われます。

従業員が出勤日や勤務時間の削減を希望することにより、さらに賃金を低下させることもあるでしょう。

仕事の内容

仕事の内容については、賃金を引き下げる分、仕事の内容もそれに応じて簡易な内容にしなければならないという風潮があるような気がします。

賃金が低下した分、仕事も楽にならないとおかしいと考える従業員もいるでしょう。

しかし、これではやる気のある従業員ほど能力発揮が十分にできないことからモチベーションが下がってしまい、事業主としても従業員にそれまでの会社生活で培ってきた経験、ノウハウ、スキルを発揮して欲しい、後輩に伝承してほしいという期待に応えてもらうことができず、双方にとって好ましくない結果になると思われます。

賃金を引き下げるのは、前段でも記載したように、会社が求める役割や責任が変わり、勤務条件も異なるからであり、仕事の内容に関しては従業員がそれまでの社歴の中で培ってきた経験、ノウハウ、スキルを最大限発揮できるようにすることを考えるべきではないでしょうか。

業務とは関係なく磨いてきた経験、ノウハウ、スキルなどがあればそれを活かすことも考えられます。

このようなことが従業員本人にとってもモチベーションの向上につながり、また事業主にとっても人材の有効活用につながり、双方に取って好ましい結果となると思います。

この「適材適所」による事業主、従業員双方のウィン・ウィンの関係を実現するためには、早い段階で60歳以降の継続雇用について面談等により本人の希望と会社が期待する仕事の内容のすり合わせを行うことが必要だと思います。

私自身の経験

私は60歳定年を機に退職して独立、開業する道を選択しました。

50歳を過ぎた頃からサラリーマン以外の働き方を経験したいという希望があったことが大きな理由です。

そのため、55歳を過ぎた頃から自分のスキルの棚卸を始め、独立開業して報酬を得るためにはどのような分野で開業するのが良いのかを考え、そのために必要な準備として、社会保険労務士や行行政書士、1級DCプランナー、中小企業診断士の資格取得の学習をしました。

60歳以降の継続雇用制度は安定した給与収入を得られるという点では魅力的でしたが、既に継続雇用制度を利用して勤務している先輩の働きぶりを見て、やはり自分は独立、開業の道を選ぶほうがやりがいがありそうだなと思い初志貫徹することとしました。

60歳以降の継続雇用制度を有効に活用するために

自分自身の経験も踏まえると、60歳以降の継続雇用制度を有効に活用するためには、早い段階で対象者に60歳以降の継続雇用制度について説明し本人の希望を聞くとともに会社として期待する役割の説明を行うことが重要ではないかと思います。

<60歳以降の継続雇用制度の説明時のポイント>

  • 60歳以降の継続雇用制度利用後の賃金について、低下する理由を含めて説明する。
  • 本人が希望する業務や就業形態と会社が期待する仕事の内容や役割をすり合わせる。
  • 本人の希望する業務を会社が用意できない場合には、会社が用意できる仕事の内容に関してリスキリング等を要請する。

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